レビュー&感想
芥川賞受賞ということで手に取って、書評を読んだらなんだか熱狂ファンの話のようで。
文体は好きじゃない。いまっぽくて流行りっぽくて昔の携帯小説みたいな文章だった。
でも、今を描くということにおいて、ここまでいまっぽいのは素晴らしいと思う。まるで友達と話しているように小説を読んだし、推しへの想いは、友人が語っているように感じた。
わたしたちは何かにすがって生きていた、それがなければ生きていけない背骨のように。
ほんの数年前の自分を見ているようだ。
好きなもの、好きな人、
よりかかりによりかかり得体の知れない何かから自分を守っていた。
真面目だと言われる主人公は、手を抜く方法を知らなかった。
YESはどこまでいってもYESのままだから、そのまま突き進んでいくしかなかった。
主人公が見ていた「推し」は、推しを人として捉えていない。主人公のなかで「推し」は想像上の何か別のものになっている。
それを自覚してなお、よりかかるというのは、信仰である。
「推し」に隠されているのは宗教なんだと思う。
信者が神を信じるように、推しを信じている。
そして、それを失っても私たちは生きなければならない。
ひとりで自立して生きるというのは、
大人になったって、本当はしんどいことなのだと思う。
印象に残った言葉
一定のへだたりのある場所で誰かの存在を感じ続けられることが、安らぎを与えてくれると言うことがあると思う。
家というものは、乱暴に引かれた椅子や扉の音が堆積し、歯軋りから小言が漏れ落ち続けることで、埃が溜まり黴が生えて、少しずつ古びていくものなのかも知れない。
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