若竹千佐子『おらおらでひとりいぐも』|タップを踏みたくなるような軽快さ

Book

あらすじ

24歳の秋、故郷を飛び出した桃子さん。住み込みのバイト、周造との出会いと結婚、2児を必死に育てた日々、そして夫の突然の死―。70代、いまや独り茶を啜る桃子さんに、突然ふるさとの懐かしい言葉で、内なる声たちがジャズセッションのように湧いてくる。おらはちゃんとに生ぎだべか? 悲しみの果て、辿り着いた自由と賑やかな孤独。すべての人の生きる意味を問う感動のベストセラー。
(「BOOK」データベースより)

レビュー&感想 オススメ度★★★

私はいつも、瞑想をしていると、勝手に頭の中で言葉が思考が、そこかしこに独り歩きする。
それに気づいて、呼吸に意識を向けなおす作業を、ひたすらにしている。
東北弁で話しかけてくるたくさんの柔毛突起たちをみていると、そのことを思い出す。
いろんな言葉が降りかかってくる、嵐のように通り過ぎていく感じ。
それに名前など付けなかったが、柔毛突起と呼ぶのは面白くていい。
私もこれからそう呼ぶことにしようかな。

何かを訴えかけるというよりは、寄り添って読むような散文のような軽快さがあるので、楽しく読める。
なんだか本当にジャズを聴きながら読むような、すこしだけタップを踏みたくなるような様子で。

映画にもなっているので、観てみようかな。
今回は読む前に映画の予告だけみて、イメージを合わせてみたりした。

桃子さんが自分を「おら」と呼んでいるのを受けて自分は昔は「うち」って言ってたなあと思いだす。
私も地方の出なので、なんだか気持ちがわかるようなところもある。
ふと、東京に来る前は、のびのびと本を読んでいたような気がした。
東京に来てから、何かに急き立てられたり、もみくちゃにされながら生きてるような自分を想像する。

本書を読んでいると、母や祖母のことを思う。一人の女性としての生があるはずだという気にさせる。
まだ学生だった頃や、田舎にいたときは、普段考えもしなかったことだ。
自分中心の世界では、役割としてどこか家族を意識していたが、
そのまえに、一人の人間が、いろんなものを抱え生きているということを思う。

BGM:賑やかな日々/ハナレグミ
ハイ!チーズ/ハナレグミ

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