あらすじ
藤子・F・不二雄を「先生」と呼び、その作品を愛する父が失踪して5年。高校生の理帆子は、夏の図書館で「写真を撮らせてほしい」と言う一人の青年に出会う。戸惑いつつも、他とは違う内面を見せていく理帆子。そして同じ頃に始まった不思議な警告。皆が愛する素敵な“道具”が私たちを照らすとき―。。
(「BOOK」データベースより)
レビュー&感想
面白かった。
若尾を見ていると、昔の彼のことを思い出して、彼にうんざりしていた時のことを思い出した。
私も彼をどこかで舐めていた気がする。カワイソメダル。
人を好きになるきっかけは意外と歪んでいたりする。
自分は他とは違うという自意識は誰にでもあって、一番それが強く信じているのが、理帆子たち高校生から20代前半くらいだと思う。あの息苦しさ。
読みながら高校生の頃の自分を思い返した。
そうだった。みんな暇だったな、と。高校生活の退屈と閉塞は確かにあった。
凍りのクジラのエピソードはすごく象徴的だ。
最後はハッピーエンドで終わるので読後感もよかった。
辻村美月作品は、『傲慢と善良』を読んだが、そちらもバットエンドに限りなくなりそうで、ならないところが良かった。
BGM:ドビッシーの「沈める寺」
心に残った言葉
守ってあげなくては。献身する自分に酔っ払う、相手の側までも満たすどうしようもない道具。私はメダルの虜だった。(p.133)
「あんまり、人の脈絡のなさを舐めない方がいい」
「どうしてそうなるのかわからないという原理、矛盾だらけの思考で人はあっさりと動くよ」
(p.270)
有効期限があるから注意して。この光の効力が続くうちに、自分の力でどうにかするんだ。大丈夫、君なら必ずそれができる(p.412)
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