砂川文次『ブラックボックス』|閉塞感や息苦しさみたいなものをリアルに感じる

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あらすじ

自転車メッセンジャーの佐久間亮介(サクマ)は、信号をギリギリで渡ろうとしてベンツに轢かれ、事故に遭う。幸い彼は無事だが、自転車は故障し、営業所に戻る。彼は過去にも職を転々としており、将来に不安を感じていた。しかし、営業所で正社員登用の話が持ち上がる。正社員登用は魅力的だが、給与は低く、業務も増えるため、彼は保留する。過去の転職歴と衝動的な行動が定職に就けない原因だと反省する。彼の同棲相手である円佳が妊娠し、責任感を感じているが、仕事には消極的だ。しかし、彼の運命は思わぬ展開を迎え、大きく変化する。

レビュー&感想

雇用環境が変化し、格差が拡大し続ける社会で、若者が向き合っている困難さが描かれている。
だれも正しい道も、ゴールも教えてくれないし、きっと知らない。

否応無く、ループする日常に絶望感を抱きながら日々を過ごしていく。
そこにある閉塞感や息苦しさみたいなものをリアルに感じた。

主人公のサクマには暴発への恐怖と諦観つきまとっている。
どうすればいいんだ?と迷子になっているさまは、
誰しもが少なからず抱いてることなんじゃないだろうか。
迷いが上手く表現されていて、この作品を読みながら救われるところがあった。

終わりに、誰にも未来はわからないということを、つまづいてきたサクマが気がつき、理解する。
それは、この困難な現状への希望のようなものを提示している。

BGM:ガヴォット・ショーロ/福田進一

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